ブラジルのオイアポケでから乗ったカヌー、乗ってから20分ほどで対岸が見えてくる。
現在時刻は0830時・・・
仏領ギアナの最初の町
そうそこは南米にありながら唯一のヨーロッパ、フランスだ。
思い起せばこのプロフェッショナル、最初の海外ミッションはフランス、この地に向かうことは謂わば母親の胎内の中に戻るが如くと言うべきだろうか・・・
この最初の町を「St George(セント・ジョージ)」と書いて「サン・ジョルジェ」と仏語で呼ぶ事に即座に気付く辺りが私を並みのツーリストと一線を画す「ヨーロッパ・エレガント・ツーリスト」たらしめたる所以である。
サン・ジョルジェに到着してイミグレで入国手続きを済ませ、早速このフランスの海外県である仏領ギアナの県庁所在地カイエンヌに向かうことにした。
これはサン・ジョルジェの中心。
ひさしぶりに聞く「ボン・ジュール(仏語のこんにちは)」が耳に心地よい・・・
私の乗るミニバスは10人乗り、たった3時間の距離に40ユーロ(約6600円)とバス代の高いブラジルでさえチープに見えてくるヨーロッパ規格の値段だ。
ドライバーも乗客も黒人だ。金持ちの白人はみんな自家用車を持っているからだ・・・
ミニバスは0900時に出発、順調に道路を走りカイエンヌには1200時頃到着
考えてみたらベレンでフェリーに乗ってからもう3夜が過ぎ、宿には泊まっていないのでここでこの母国の香りに包まれながらのんびりしたいという気持ちになっていた。
だが、ここで最安の宿はLa Bodega、ドミで20ユーロもしてクオリティーはそれ程良くないと聞いていたので、この際、この母国への帰還を記念してちょっといい、南米ではハイクラスだがここでは下から2番目にやすい「ホテル・ケッタイ」へ向かう。
シングルの値段は43ユーロ、驚きの値段だがまあ1日ぐらいのんびりするのならいいだろう、ただまだ部屋の用意が出来ていないらしく1時間は待たなければいけないということだ。
少し悩んだが、この際ベレンで修理したキャリーパックのテストも兼ねて街をぶらつきながら他の宿も当たってみていいのがなければここに泊まるという腹案にする。
私はホテルのレセの女性に「一時間後からOKだね」と言ってそのホテルを出て街を散策することにした。
カイエンヌの街並
中心の教会。そして海沿いの公園、草で見えないがこの向こうは海
ちょっとおしゃれな建物。道路標識の看板も何かよさげ・・・
そして市庁舎・・・キレイ・・・
「おおっ!フランスよ!!」
そして私はここを出発することにした・・・
よくよく考えてみたら別に首都じゃないし・・・それにたった2時間歩いただけでほとんどもう見所をみてしまったからだ・・・。
もっとも小さな街なので見所と言えるような物は殆どないのだが・・・
さらに言うなら今日は日曜日、誰も外にいない、聞いていた情報では「パリ・ジェンヌ」と見まがうほどの可愛らしいフランス娘も一杯いるらしいが・・・これでは今日いたところでノーチャンス、目の保養も仕様がない・・・
私はミニバス乗り場へ向かう。
ミニバスとその乗り場の案内、壁に書いてあるから分かり易いって・・・これでフランス??
またたった3時間半の距離に35ユーロ(約5500円)、恐るべき値段だ・・・
しかも今日は日曜日、客も私の他に3人・・・
35ユーロもするくせにミニバスは満員にならないと出発しないと言うアフリカ方式だ。
30分ぐらいまっても乗客は一人も増えず、私がしびれをきらしてじゃあホテルにというポーズを見せるともう一台とまっていたミニバスが「今日戻らなければいけないからそれじゃあ・・・」と応じてくれる。
我々はそのミニバスに乗りスリナムとの国境町であるサンローランを目指す。
1400時に出発したバスは1730時に到着。
到着と同時にカヌーの漕ぎ手達が猛烈な客引きを始める。
ここでも見るのは黒人ばかりだ・・・
到着した船着場付近
確か仕入れている情報では客引きがうざいからイミグレへと書いてあったのでドライバーにはイミグレと言っていたのにも関わらず船着場で下ろされてしまったようだ。
いちどミニバスから降りた私に数人、「俺のカヌーに乗れ」としつこく言い寄ってくる。
中には勝手に私の荷物に手を掛け、自分の客に無理強いしようとしてくる・・・
「インドか?ここは???」
私がまずはイミグレに行きたいし、しばらく落ち着きたいからといっても聞く耳をもたない。
彼等は彼らの目の前にある客をただ捕まえようとして猛烈な勢いで寄ってきてこちらに落ち着く暇を与えようとしない。
私はこういった手合いが大嫌いである。とはいっても彼らの中の誰かに頼らなければいけないというのが余計に気に入らない
「まずはイミグレに行きたいからどこだ?」と聞いても「俺のカヌーに乗れ」としか言ってこない・・・
この際だからこういう手合いのいない所まで歩いていこうと思いl、荷物を取りにくる奴に「さわるな!」といいながら歩き始める。
少し歩くとミニバスに同乗していた他の 客がカヌーを掴まえていて私に「一緒に来なよ!」と誘いかけてくる。ガイアナ人の夫妻でガイアナへ向かっている人たちだ。
私はそれならばとカヌーに飛び乗ると、それまで私に付きまとっていた客引きの男の一人が何故か一緒に乗ってくる。
「はぁ・・・」
私はそれまで彼に散々「お前は要らない」と言ってきたのに・・・
こういう人間は一番嫌いだ。
我々を乗せたカヌーはイミグレへ向かう。
その途中、同じ客である夫妻に「イミグレへ行くの?」。「料金は?」と聞くと彼らが答えるのと共に彼も答えてくる。
「この野郎・・・お前には聞いていないのに・・・」
私は彼に向かってこう言い放つ。
「俺は一度もお前と一緒に行くとは行ってないし、一緒に来てくれとも言ってない、正直言ってお前は要らない」
馬鹿には馬鹿と、それも相手にわかる形で言うのが一番だ。
すると彼は
「俺のことが嫌いなのはこの帽子(頭の上に盛り上がるジャマイカ人の良くかぶっているような帽子)のせいか?」
などと言い返してくる
私はさらに
「お前の帽子がなんであれそんなのは知ったことじゃない、いらないというのにしつこく言い寄ってきた挙句に勝手に同乗されて最後はガイド料と言ってくる人間が嫌いなだけだ」
と言い、後は無視することにする。
そうこう言う内に仏領ギアナのイミグレにまず到着
イミグレ
荷物を全て持っていこうとする私に
「置いていって問題ないよ」
と彼が言ってくるが・・・
「習慣だ。それにお前は俺が要らないというのに勝手についてきている、そんな奴の言うことは聞く気がない」
とこれも冷たく言い放つ・・・
それにしても・・・
客引きでしつこい人間は本当に気に入らない・・・
こちらが何を言っても聞かず、自分の言いたいことだけ、そしてこちらの知っていることでも全部勝手に喋って「俺が教えてやっているんだ」といわんばかりの顔をする・・・
私がイミグレで手続きを終えて戻ってくると
「乗りなよ・・・」
とまた・・・
漕ぎ手は別なのにさも自分のカヌーのように・・・
本当に嫌な男だ・・・
そして対岸に渡る、向こうはスリナムだ・・・
スリナム最初の町アルビナ
カヌーはイミグレに到着。
私が下りようとすると男が私に
「これがイミグレだから料金を払ってくれ・・・」
と言ってくる・・・
「お前にではないだろう・・・」
私が「漕ぎ手にだろう」
というと「俺のカヌーだから俺に・・・」
と言ってくる。
押し問答も馬鹿馬鹿しい、それにカヌーに乗ったから確かに料金は支払わなければいけない。
私が5ユーロだし、じゃあと漕ぎ手に見せてから彼に渡そうとすると
「イミグレに寄ったから10ユーロだ」
と・・・
「はぁぁぁぁ・・・・」
私は終始一貫彼を拒否し続けてきた、そして料金も5ユーロ、と聞いた情報でも確認した時も聞いている。
それが船着場から仏領ギアナのイミグレでまず5ユーロ、そして仏領ギアナのイミグレからスリナムのイミグレまでまた5ユーロなんていう言い分は・・・
「ここはフランスか??」
私は彼に冷たくこう言い放つ
「あんた俺は料金を確認した時に5ユーロって勝手に答えてたよな、お前が5ユーロって言うから5ユーロ払う、それだけだ・・・」
私は彼の手に5ユーロ渡し、イミグレへと向かう、彼は肩をすくめ「嫌な客に当たっちまった」といわんばかりの態度でカヌーに戻っていく・・・
「この野郎・・・」
てめえで勝手についてきて、勝手にこちらの知っていることまで無理やり世話を焼き、そして最後には勝手な料金を払わせようとしてこちらが払わないならさもこっちが悪いといわんばかりの態度をとりやがって・・・
だからこういった手合いは一番嫌いだ・・・
これが・・・これがあの「フランス」で味会わなければいけない経験としたら・・・
馬鹿馬鹿しすぎる・・・
それに何とも気に入らない・・・
スリナムの手続きを終えて首都であるパラマリボ行きのミニバスを掴まえた時にはもう1800時を回っていた・・・
私はパラマリボへ向かうこの日が暮れ道中のミニバスの中、このたった一日で抜けて仏領ギアナに考えを馳せていた・・・
サンジョルジェ、そして何もないカイエンヌ、さらについ先ほどのとてもフランスとは思えない客引きのうっとおしさと性質の悪さ・・・
そして私はこう思う・・・
南米にあるフランス唯一の海外県のこの仏領ギアナ・・・
「あそこは断じて”フランスではない”」
と・・・